「奥能登広域消費生活センター便り」(3月1日発行)

「奥能登広域消費生活センター便り」(31日発行)を発行しました。

成年年齢引き下げを前に​
~学校における消費者教育の現状~

 令和4年4月1日、成年年齢が18歳へ引き下げられます。

 学校での消費者教育の現状について、金沢大学教授・尾島恭子先生に伺いました。

 

 成年年齢引き下げを前に、今、学校教育では子どもたちにどのような力をつけたいと考えているのか、その実態はどうなっているのかについて紹介したいと思います。

 先に「消費者教育」について確認しますが、消費者被害防止教育(=騙されない自立した消費者の育成に向けた教育)と、消費者市民教育(=持続可能な社会をつくる未来のための消費者の育成に向けた教育)と双方が含まれます。学校教育においてはエシカル消費をはじめとした消費者市民育成の内容も多く入ってきており、双方の充実が求められているのですが、今回は「成年年齢引き下げ」に着目し、消費者被害防止教育に重点を置いた内容で進めていきます。

 学校の教育課程の基準となる学習指導要領は10年程度で見直されますが、直近の学習指導要領が目指す内容を整理した文部科学省のリーフレット「生きる力 学びの、その先へ」には、これから重視することとして消費者教育も挙げられていることが確認できます。

 

 文部科学省のリーフレット「生きる力 学びの、その先へ」

「自立した消費者を育むため、契約の重要性や消費者の権利と責任などについて学習します。」と記されています。

リーフレットは、文部科学省ウェブサイトからご覧いただけます。(左図は文部科学省ウェブサイトより)

「契約」の学習開始は中学校から小学校へ

 消費者教育は、教科としては社会科(公民科)や家庭科が中心となりますが、今回の改訂ではそれらの教科で消費者教育の内容は充実されています。その一つ家庭科では、例えば今までは中学校で学んでいた「契約」についても小学校から学ぶようになりました。その背景には消費者被害の低年齢化やキャッシュレス化の進行もありますが、早い段階から「契約」の知識を習得することが極めて重要となってきたことは間違いありません。また、高校家庭科においては、債券や投資信託、資産形成の視点についての学びが新たに追加されましたが、成年年齢引き下げにより高校生の段階から一般口座が開設できることからも、ますます契約の知識が重要となってきます。

  そのような中で、目まぐるしく変化する社会経済環境に教員はどのように対応できるのでしょうか。教員の多忙化が叫ばれる中で、教員自らが消費者教育の教材を開発したり、最新の情報を集めて生徒に伝えたりするのは負担が大きく困難です。そこで既存の教材を有効活用したり、外部講師を招いたりするのが最も効果的といえるでしょう。

関係機関との連携強化は、今が好機

 教材の活用については、一度教えるだけでは定着しないなど一層の工夫が必要となりますし、外部講師については、消費者行政と学校や教育委員会等の関係機関との連携が困難であるなどの課題も挙げられます。ただ、成年年齢引き下げを目前に控えた今、双方の連携を強化・拡充したいという調査結果や、外部講師も条件が合えば利用したいとする回答もあり、何かきっかけがあれば連携は可能であるとの方向性も見いだせます。

 学校現場と消費者行政の連携を強化できるタイミングは、成年年齢の引き下げにより「契約」の学びの重要度が一気に増す「今」かもしれません。

著:尾島恭子 金沢大学融合研究域融合科学系教授

新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止とした「消費生活セミナー」(2月22日予定)にてご講演いただく予定だった内容をもとに、このセンター便りのために書き下ろしていただきました。尾島先生、ありがとうございました。

 奥能登広域消費生活センターでは、消費生活相談員など職員が皆さまのもとへ訪問し、「出前講座」を行っています。消費生活に必要な知識や消費者トラブルへの対処法などを学び、消費者トラブルの未然防止にお役立てください。

詳しくは「出前講座のご案内」をご覧ください。